小説

「ニョー!!」

「ニョロモ、戦闘不能!!」

ソウミのニューラのブレイククローが決まってしまい、先のキャモメ戦で傷ついてしまったニョロモがあっという間にKOされてしまった。

「これでこなたはレディバとニョロモを倒されて後1体・・・!!」

「あっちはまだ2体も残ってるよ?」

こなた絶体絶命の中を見守るかがみ達。

しかし、そこにさっきまでいた白石の姿はなかった。


彼がいたのは客席を出たところの廊下。

どうやら白石の携帯・・・ポケナビが鳴ったらしい。

「もしもし白石ですけど・・・?へ?試合?」

白石が電話口の話を一方的に聞き約30秒・・・。

白石の絶叫が廊下にこだました。



らき☆ぽけ

第11話「かがみとエミリィ!!熱戦イノキ大会!!」



「ヒコザル、戦闘不能!!よって勝者ソウミ!!」

「あぁ・・・こなちゃん負けちゃった・・・。」

「まぁ最初だしね・・・?」

湧き上がる歓声の中、こなたの敗北にショックを受けるつかさ。

そんなつかさに戻ってきた白石が詰め寄った。

「つかささん!!!」

「ふぇ?」

あまりの形相の白石にマジビビりしてしまうつかさ。

かがみからしてみたらただ単にうるさいだけである。

「し・あ・い!!試合が始まってるみたいですよ!?」

「しあい?もう終わっちゃったよ?」

ボケるつかさに白石は説明してる時間はないと思ったのかつかさの手を掴みそのまま走り出した。

「あ、ちょっと!!」

「こら、どこ行こうってのよ?」

強引につかさを引っ張る白石をかがみとエミリィが慌てて追いかけた。

そして流れてくるアナウンス

「次のタッグバトルDスタジアム1回戦第7試合出場のつかさ選手及びみのる選手大至急Dスタジアムにお越しください 」

スタジアムに鳴り響くそのアナウンスでかがみは白石の急な行動を理解した。

「もー!!あんた観戦どころじゃなかったんじゃない!!」

「ごめんなさーい!!」

「謝らなくていいからとにかく走れ!!」

かがみの怒声が廊下を通過し、そして、ものの1分ちょっとという驚異のスピードでDスタジアムについた。


「はぁはぁ・・・ま、間に合った。」

息も絶え絶えにつかさと白石は無事にDスタジアムへと入っていく。

「それではこれよりタッグバトル一回戦第4試合、つかさ&みのるペアVSヤギリ&シチョウペアのバトルを行います。」

「何とか間に合ったみたいだね?」

客席でつかさたちの試合を見るかがみ達に試合を終えたばかりのこなたがやってきた。

「お、こなた!お疲れ!!」

「いやー負けちゃったよ!!やっぱりいきなり出場して優勝なんて甘かったね?」

「まぁね・・・。」

こなたは特に落ち込む感じも見せずその事に少しホッとするかがみ。

「あれ?そちらさんは?」

こなたがかがみの横にいるエミリィに気がついた。

「あんたも見てたでしょ?私のタッグパートナーのエミリィよ?」

「エミリィよ?よろしくね!!」」

「あ、私こなた!!よろしくぅ!!」

互いに紹介をしながら友好の握手をかわすこなたとエミリィ。

そんな中つかさと白石の試合が始まった。


「いけっ!イシツブテ!!」

「頼んだよ、ジグザグマ!!」

まず、相手のヤギリが、がんせきポケモンのイシツブテ、シチョウがまめだぬきポケモンのジグザグマを繰り出す。

それを見て白石も自分が登録してあるモンスターボールを手に取った。

「いけっ!コノハナ!!」

「コーノッ!!」

白石はコノハナを出す。

つかさはヒトカゲポケモンをフィールドに繰り出した。

「カゲ―!!」

とりあえずフィールドに現れたヒトカゲを見て一安心する白石であったが、気は抜けない。

つかさの様子を窺う限り白石には彼女が以前自分と戦った時のように極度の緊張に襲われているように思えた。


そして、かがみ。

「あの子・・・あんなんでこれから大丈夫かな?」

そう言いながらかがみは相手の2体のポケモンをいつものように手に持っている図鑑で調べる。

「イシツブテ・・・山道に多く分布するポケモンで旅行者によく踏まれることがある。また子供の間ではこのイシツブテを使ってのイシツブテ合戦があるらしい。ちなみに体重は一般的には20kg」

「こわっ!!」

隣でそれを聞いていたエミリイが顔を青くした。

それは読み上げるかがみも同様だ。

気を取り直してかがみはもう1匹のポケモンも図鑑で調べた。

「ジグザグマ・・・様々なものに好奇心を持ちジグザグと忙しない足取りで歩く。」

「あ、つかさっぽい!!」

「まぁ日下部って感じもするかな?」


「では、始め!!」

審判の合図とともにそれぞれのトレーナーから指示が飛び交う。

「イシツブテ、”ころがる”!!」

「コノハナ、イシツブテに”はっぱカッター”!!」

「ジグザグマ、”ミサイルばり”!!」

「ラッシャイ!!」

「コーノ!!」

ヒトカゲめがけて転がり出すイシツブテにコノハナが”はっぱカッター”で止めに入る。

一方のジグザグマも”ミサイルばり”でヒトカゲを狙う。

白石が慌ててつかさにフォローの指示をしようとしたその時だった。

「カゲちゃん、かわして”かえんほうしゃ”!!」

「カーゲッ!!」

つかさの指示を受け、ヒトカゲはその機敏な動きで”ミサイルばり”をかわすと即座にジグザグマに”かえんほうしゃ”を浴びせた。

「・・・!!」

「・・・!?」

その光景に隣の白石、そして客席のかがみは驚いた。

しかし、同じ驚きでも白石は、見かけに寄らずちゃんとした指示を送り、対処する彼女を見て驚き、その一方でかがみはあまりに早いわが妹の順応性に驚いた。

今まで彼女がこんなにも早く一つの事に慣れたことがあっただろうか。

「つかさ、私達のジム戦に感化されちゃったんじゃない?」

横のこなたの言葉に耳を傾けるも、ただ感化されただけでつかさがあそこまでなれるとはとても思えなかった。

ただ自分が妹のことをよく理解していなかっただけなのだろうか・・・。

本当はやればできる子なのだろうか・・・。

かがみの驚きはいつしか戸惑いへと変わっていった。


そして・・・

「ジグザグマ、戦闘不能!!勝者つかさ選手&白石選手ペア!!」

戸惑うかがみをよそに戦いは終結を迎えていた。


「お疲れ〜!!」

控え室でこなた達がつかさたちに賛辞を贈る。

少し照れくさそうに笑うつかさ。

「でも驚いたよ!あのつかさがあんなにハキハキと指示を送るなんて!!もしかして私たちの今までの試合に影響されちゃった?」

「え?えへへ・・・まぁそんな所かな?」

つかさにしては妙に歯切れの悪い言い方。

だけど元々嘘をつけるような人物ではない。

特に自分のことでは・・・

そこまで考えるとこなたはある事を思い出したかのようにかがみを見た。

(まさか・・・つかさ・・・。)



そして、これ以上話が無意味に長くなるのもアレなので間もなく始まるタッグバトルの2回戦・・・。

タッグバトル参加人数が8組16人のこの小規模の大会では準決勝となるわけだが・・・。

「これより、タッグバトル2回戦・かがみ&エミリィ対ルンバ&マヨによる第一試合をを始めます!!」

審判長・ジャムの声と共に賑わう会場・・・。

応援席にこなた達の姿はない・・・。

隣のスタジアムで同時進行に試合をしているつかさの応援に全員して行ったのだ。

これはかがみたっての希望でもある為、別に軽いイジメハブとかではない。


「それでは、両者ポケモンを前に!!」

「クッチ!」

「ホォォォ!!」

「スバァ!」

「タンマァ!!」

かがみ&エミリィ組はクチートとアゲハント。

対するルンバ&マヨのポケモンはスバメとタマタマだ。

「それでは、始め!!」


ジャムの一声と共に試合が始められた丁度その頃・・・


かがみ達の試合よりおよそ1,2分早く始められたつかさたちの試合・・・。

応援席のこなたはあまりの出来事に言葉をなくしていた。

「タツベイ戦闘不能!!」

「そんな・・・タツベイ!!」

戦闘不能状態のタツベイを悔しそうにボールに戻す白石。

こなたたちメンバーの中では恐らく一番ポケモンバトルに慣れているであろう白石がものの見事にやられてしまった。

現在、フィールドに残る3匹はつかさのヒトカゲ・・・

そして相手二人、リキヤのオニドリルとドウザンのハブネーク。

相性的には決して悪くはない。

しかし今のつかさと彼らでは経験の有無が大いにある。

さっきの試合だってつかさはまともに戦えてはいたがそれでも白石のリードのお陰で勝てた様なものだ

つかさの勝率は果てしなく低かった。

「マズイねぇ・・・非常にマズイ。」

さすがのこなたも友の勝利は半ば・・・いや9割以上の諦めを見せていた。

当のつかさも今にも泣き出しそうに表情を強張らせている。

(うぅ・・・どうしよう・・・。私ちょっとだけ調子乗っちゃった!!この勢いで優勝できるかもなんて思ってたらこれだよぉ!!お姉ちゃんの言う通りだったなぁ!!油断大敵だったぁ!・・・お姉ちゃん・・・。)

姉の言われたことを後悔しながら思い出していると、また別のことも同時に思い出した。

それは・・・

(そういえばお姉ちゃんも負けちゃってたな・・・。そうだ・・・あんなにボロボロにやられながらも一生懸命・・・)

つかさはそれだけ考えると息を目一杯吸って、吐いた。

(そ、そうだ!私がこんなんじゃカゲちゃん達に迷惑かけちゃうってこの前思ったばっかりじゃん!!今、やれるだけの精一杯のことをやろう!!私はお姉ちゃんやこなちゃんを頼ってるようにカゲちゃん達も私を頼りにしてくれてるんだ!!)

「おいおい?どうした、降参かぁ?」

相手のドウザンが少し苛立ったようにつかさに声をかける。

するとつかさは慌てたように首を横に振った。

「カゲちゃん、”かえんほうしゃ”!!」

「ハブネーク、”ポイズンテール”!!」

「オニドリル、”ドリルくちばし”!!」

ヒトカゲの”かえんほうしゃ”をハブネークが尻尾でかき消すと、その炎の合間からオニドリルが嘴を勢いよく回転させながらヒトカゲの懐に飛び込んだ。

ダメージを受けるヒトカだったが、すぐに体勢を立て直し、反撃の姿勢に入る。

それに答えるようにつかさも懸命に指示を出した。

「えっと、”メタルクロー”!!」

つかさは相手が接近戦タイプと思ったのかどうかは知らないが、ヒトカゲに相手の懐へと飛びこませた。

「ふん、見かけによらず度胸のある女だ。ハブネーク、”ポイズンテール”!!」

ヒトカゲ、渾身の一撃をハブネークは自慢の尻尾でなんなく弾くと、そのまま頭上に毒の尻尾を叩きこんだ。

「カ、カゲェ・・・!!」

「ハブァ?」

負けじとヒトカゲは頭上に”ポイズンテール”を受けたその瞬間にハブネークの尻尾をもう一つの手でつかんでいた。

「カゲちゃん、ナイスだよ!!”かえんほうしゃ”!!」

「おっと、俺のオニドリルを忘れてもらっては困る!!”ふきとばし”だ!!」

オニドリルは強風を起こし、ヒトカゲの”かえんほうしゃ”を弱めていく。

「よし、ハブネーク”かみつく”だ!!」

ヒトカゲの攻撃が弱まったところで、ハブネークがヒトカゲにかみつき、自分の尻尾から引き剥がそうとする。

しかしヒトカゲは今度はハブネークの頭にしがみついた。

「”かえんほうしゃ”!!」

次はオニドリルの”ふきとばし”の暇なく見事にハブネークにクリーンヒットした。

「やった!」

「おぉ!!」

「なんと・・・!?」

ようやく当たった攻撃につかさを始め、白石とこなたも喜びを顔に表した。

しかし、それも束の間だった。

「ハブネーク、”ヘドロばくだん”!!」

「オニドリル、”ドリルくちばし”!!」

「カゲェ!!」

倒れていたハブネークが起きあがり素早くヒトカゲに攻撃を浴びせ、怯ませ、そこへオニドリルがとどめの一撃を叩きこんだ。

「カ、カゲちゃん!!」

「ヒトカゲ、戦闘不能!!よって、この勝負リキヤ&ドウザンの勝ち!!」


「あぁ・・・結局負けちゃったかぁ。だけどあのヒトカゲ、流石にオヤカタのポケモンだけはあるね?」

思わず脱力したこなたは小さくつかさとヒトカゲの健闘を称えた。


そして・・・控室では白石がひたすらつかさに謝っていた。

「つかささん、申し訳ありません!!自分からあなたを誘っておいてこのザマ・・・」

「いいよセバスチャン・・・どっちみち出場を決めたのは私自身だし・・・」

こう大声で頭を下げられると返って人目に映り人見知りのつかさにしてはかなりの羞恥プレイである。

横目で人々の視線を気にしているとようやく白石の謝罪は止まった。

「それにしてもつかささんのヒトカゲ、かなり肝っ玉据わってましたね?」

「へ?」

「最初から攻撃を受けるつもりで突っ込まなきゃ、ああやって敵の体にしがみつくなんて出来ませんから・・・」

「あ、うん!そうだね・・・私もびっくりしちゃった。私としてはあんまりああいうのはやめて欲しかったりするんだけどなぁ・・・」

そう言うつかさは困ったような表情でヒトカゲの入ったボールを見つめていた。


「そっか・・・結局負けちゃったか・・・。」

隣で見事に決勝に駒を進めたかがみがこなたからつかさ&白石敗北の報せを聞いた。

特に驚くこともなく、、どこかしらホッとしたようなかがみの表情にこなたは感づいた。

「なに?姉妹でバトルするのに少し気が引けた?」

「ん?まぁ・・・それもあるかもね?こなただったら容赦なく戦える気がするんだけど・・・」

「そだね?かがみとつかさが争ってる図なんてあまり想像できないもんね!かがみが一方的な図はよく見るけど・・・」

「なんだと?そんなことないわよ!!」

かがみがこなたの意見を素早く撤回する。

「それより、決勝戦かなり手ごわい相手だけど誰でいくか決まってるの?」

こなたの質問にかがみが少し視線を上に向けた。

どうやらまだ考え中らしい。

「前の2試合でチコとクチートを使ったから、次はムックルかミミロルのどっちかにしようか迷ってるんだけど・・・エミリィの方もまだ決めてないって言ってるし・・・。」

「ふーん・・・まぁ試合まであと30分位あるしそれまでゆっくり考えなよ?」

「うん・・・そうするわ。」



そして、決勝戦・・・。

実況のDJの声で会場は熱気に包まれていた。

「お姉ちゃん、頑張ってぇ!!」

「かがみ〜ん!!エミリィ!!油断大敵だよぉ!!」

応援席から送られるこなた達の声が、スタジアム赤コーナーに立つかがみ達に大いにプレッシャーを与えていた。

「さぁ!!いよいよこのイノキ大会もクライマックス!!決勝戦です!!見事にこのタッグバトル部門を勝ち抜いてきた二組は・・・かがみ&エミリィペアとリキヤ&ドーザンペア!!」

すると途端にかがみたち選手に客席から盛大な拍手が送られる。

その拍手の音に少し身をすくめてしまう。

「お姉ちゃんとエミリイちゃん芸能人見たいだね?」

「つかささん・・・のんきな・・・。」

仮にも先ほど惨敗を喫した二人組と自分の姉が優勝をかけて戦おうというのに実に呑気なつかさの態度に肩を張っていた白石の力も自然と抜けていく。

「それでは、両選手ポケモンを前に・・・!!」


DJの言葉と共に4人の選手はモンスターボールを投げた。

「プック!!」

「ドルゥゥ!!」

相手のリキヤはプクリン、ドーザンはくちばしポケモンのオニドリルの2匹を出した。

そして、それに対抗するかがみ&エミリィのポケモンは・・・

「じゃあ、私の最初のパートナー、エネコ!!」

「ネー!!」

エミリィが繰り出したのはこねこポケモンのエネコ。

そして、かがみは・・・

「頼んだわよ・・・ムックル!!」

「ムクー!」

悩みぬいた末、かがみはムックルを選んでいた。

ボールから出てきたムックルは相手のポケモンを見た途端に目つきが変わった。


「かがみのムックル、力入ってるね?」

「そだね。どうしたんだろ?」

客席から見ていたこなたとつかさ。

片手にポップコーンを持ちながら、かがみ達の決勝戦を見守っていた。

やはり少し遠目の客席からでもムックルのいつもの違いは分かるらしい。


「それでは、バトル、スタート!!」

そして、DJの一言で決勝戦が始まった・・・!!

「プクリンかぁ・・・。」

以前、タカミナのプクリンに簡単にやられてしまったことを思い出したかがみは若干ながらに肩に力が入った。

それは、直接にやられたムックルも同等である。

「ムックル、前みたいにはいかないわよ!!」

「ムクー!!」

かがみの一声はムックルの闘争心に完全に火を付けた。

「ムックル、”つばめがえし”!!」

「オニドリル、”ドリルくちばし”!!」

先手打って”つばめがえし”で迫るムックルを同じひこうタイプの技の”ドリルくちばし”で迎え撃つ。

「ドルゥ・・・!!」

「ム・・・ク・・・!!」


・・・吹っ飛んだのはムックルだった。

元々の技の威力もさることながら、それ以上に純粋な力が圧倒的にオニドリルの方が上だった。

「互いの初撃はオニドリルに軍配が上がった!!」

DJの声が場内に響く度、それに感化されるかのように客達の声が沸き上がる。

「プクリン、”ジャイロボール”!!」

体勢を崩すムックルに容赦なく、回転がかったプクリンが、突っ込んでくる。

「エネコ、”シャドーボール”!!」

「ンネー!!」

エネコはシャドーボールを放ち、プクリンの”ジャイロボール”の威力を弱めて見せた。

そして、その間ムックルが姿勢を立て直し、反撃の体勢を取る。

「ムックル、オニドリルに”でんこうせっか”!!」

問答無用の先制攻撃は確実にオニドリルに命中。

しかし、ダメージは少なく、オニドリルはすぐに体勢を立て直した。

「やっぱり、一筋縄でいかないね?」

「それより、エミリィさっきの”シャドーボール”ゴースト技なのになんでノーマルのプクリンに当たったの?」

バトルの最中かがみがそんな疑問をぶつけてきた。

エミリィはそんなかがみに丁寧にその秘密を教えた。

「”ノーマルスキン”・・・エネコ専用の特性で全ての技がノーマルタイプになるのよ!!」

「へ?全部?」

かがみが少し間の抜けた声を出す。

驚きよりも疑問がかがみの頭を駆け巡ったようだ。

「それは・・・意味あるの?っていうかゴーストに絶対に勝てないじゃない?」

「まぁそうなんだけど・・・いいのいいの!”特性は2の次よ!!エミリィとエネコにとってはね?」

まぁ確かにそれは言う通りかもしれない。

かがみもそう思いひとまずは納得した。

そして、この強敵2匹に勝つ術を必死に頭の中で模索していた。

「じゃあ、私援護に回るから、かがみ攻めて攻めて攻めまくってね?」

エミリィからの突然の提案にかがみは目を見開いて彼女を見た。

エミリィは至って真剣な表情だ。

どうやらマジらしい。

エミリィに何か策があるとりあえずは信じ、そしてとりあえ黙って頷いて見せた。

「じゃあ、行くわよ!!”つばめがえし”!!」

「オニドリル、”こわいかお”!!」

すると、オニドリルは鬼の形相でムックルを睨みつけ、それにムックルは委縮し動きを止めてしまった。

故に動きが格段と遅くなってしまった。

「怯まないでムックル。」

「オニドリル、”トライアタック”!!」

オニドリルは嘴から三角状の光を作り出し、ムックルに放つ。

「エネコ、フォロー!!”シャドーボール”!!」

「プクリン!!」

「な・・・!?」

”トライアタック”を防ごうとするエネコの前にプクリンが立ちふさがる。

同時に攻撃はプクリンが当たってしまったが体力が自慢のプクリンにはイマイチ応えない。

「ムクー!!」

そんな間にオニドリルの”トライアタック”はムックルに当たってしまった。

そして・・・!!

「ムックル・・・!!」

「おおっとこれは”トライアタック”の追加効果の一つ、「こおり」状態となってしまった!!これは万事休すか!?」

DJの言う通り、”トライアタック”の直撃を喰らったムックルは冷たい氷の中で動けずにいた。

動けるかどうかは運とポケモン次第だろう。

「プクリン、とどめだ!!”ハイパーボイス”!!」

するとプクリンは大きく息を吸い込むと一気に耳がどうにうかなりそうな奇声を発した。

かがみ達はもちろん客席の人間たちも慌てて耳を塞いだ。

エネコもその声に足が出ず動けずにいた。

「これは、凄まじいプクリンの”ハイパーボイス”!!こんなこともあろうかとヘッドホンを持ってきた自分に敬服いたします。」

と、客そっちのけでDJは耳あてを付け、再び仕事に移った。

と、まぁこんな状態で彼の実況が伝わるかどうかは謎だが・・・。


「かがみ、どうする。このままじゃやられちゃう!!」

「冗談じゃないわ・・・!二度も同じポケモンに負けてたまるもんですか!!」

そう言うとかがみは氷漬けのムックルに出来うる限りに近づいた。

「ちょっとムックル・・・あんた、このまま黙ってやられてるつもり?そんなわけないわよね?男だったら、たまには男らしいところ私に見せてみなさい!!」

「かがみ・・・手厳しいなぁ・・・。」

耳を塞ぎながらもエミリィにはかがみのムックルに対する檄が聞こえたらしく苦笑いを浮かべた。

・・・とその時だった。

今まで、なんの反応のなかった氷の塊がほのかに光り始めた。

それに気づき、ムックルの姿を再度確認すると、ムックルの体を凄まじい光が包み込む。

そしてムックルの姿を変えていく。

プクリンの攻撃もその現象に気を取られてかいつしか止んでいた。

そして・・・

「ムックバード!!」

氷が割れる音共に中から現れたのは体格が倍以上となったムックルの進化形のムクバードだった。

「おぉっと・・・!!これは奇跡・・・かがみ選手のムックルがムクバードに進化したぁ!!」

ワッと湧く場内とは対照的にかがみはポカンと口を開いたまま、ムクバード見上げ立ち尽くしていた。

そこへ、慌ててエミリィからフォローが入る。

「あれはムクバードって言ってムックルの進化形よ!!かがみの声に応えてくれたんだから、ぼーっとしてないで声かけてあげな?」

「あ、う・・・うん!!」

エミリィにそう言われかがみは改めてムクバードと体を向き合った。

「えっと・・・ムクバード・・・よろしく!!」

「ムックバァ!!」

かがみの言葉に嬉しそうな反応をするムクバード。

それに対し、かがみも笑みでた優しい笑顔で返した。

「よーし・・・ムクバードさっきのお返しよ!あんたの力見せつけてやりましょ!」

「ムクバー!!」

改めて身を引き締め、再び闘争心を燃やし始める二人。 相手もそれを受け取ってか、にやりと口元に笑みを浮かべた。

「まさか・・・進化とはな?面白い・・・。」

「やってやろうぜドウザン!俺達の本気見せてやる。」

リキヤとドウザンも気合い十分だ!!


互いの意気込みを確認したところで再びバトルは始まった。

「オニドリル、”ドリルくちばし”!!」

「ムクバード、”つばめがえし”!!」

「ドルゥ!!」

「ムクバァ!!」

2度目の激突・・・。

さっきとは違い、ムクバードはオニドリルに退けをとらない。

「ドルゥ・・・」

「ムクバァ・・・」

ほんの数秒の激突・・・

そして、互いの強さを見せあうと、両者は退き目で牽制し合う。

「おおっと!!両者全く退かない!!進化したことにより力、スピード、そして技の精度共に大幅なパワーアップをしております!!」

「かがみ、私に考えがあるの!エネコをムクバードの背中に・・・!!」

「へ・・・?」

エミリィは何かを思いついたらしくかがみに相談を持ちかけてきた。

その顔は自信に溢れている。

「分かったわ。ムクバード、お願い!!」

「エネコ、しっかりね?」

「ムックバァ!!」

「ネー!」

エネコはチョンとムクバードの背中い乗ると、ムクバードは上昇始めた。

「なんのつもりかは知らんが、プクリン”ハイパーボース”!!」

「エネコ、”ねこのて”!!」

すると、エネコはムクバードの背中で尻尾を振ると、その尻尾が光り出し、突如口から”みずてっぽう”を吐きだした。

そして、それはプクリンの口にヒットし、見事に”ハイパーボイス”を食い止めた。

「エネコって水タイプの技も使えるの?」

「ううん・・・”ねこのて”は自分の手持ちの技をランダムで出して攻撃するの。」

「ランダムって・・・」

それがエミリィの言ってた策なのかとジト目で彼女の顔を見て疑う。

エミリィはその視線でかがみの心中を察しているのか分かったようでちょっぴり舌を出してにっこりと笑って見せた。

(・・・こいつ!)

一瞬怒りらしきものが沸いたがひとあずシメル云々はバトルが終わってからということでかがみは飛んでいるムクバードに目を戻す。

「ムクバード、プクリンに”つばめがえし”!エネコ、しっかり掴まってなさいよ!」

「ネ?・・・ネー!!」

急な降下でエネコは慌ててムクバードに体ごとしがみついた。

そして、一気に加速する。

「オニドリル、”トライアタック”!!」

ドーザンの指示にエミリィの口元が緩んだ。

いかにもそれを待っていたかのように・・・。

「エネコ、”フラッシュ”!!」

エネコの体が急に光り出し、オニドリルとプクリンはその眩しさに目をくらませ閉じてしまった。

「なんと・・・ここでエネコ、フラッシュだぁ!!試合模様をお伝えしようにも激しい光がポケモン達の周りを包み視認が少々困難になっております、なんという営業妨害だぁ!!」

「今よかがみ!!」

「え、えぇ・・・ムクバード!」

「ムクバァー!!」

ムクバードの最大加速で一気にプクリンにまで詰め寄る。

「プクリン、”メガトンパンチ”!!」

目をくらませながらもプクリンの攻撃はまっすぐ向かってきた。

しかし、ムクバードはそれを難なく弾き飛ばすとプクリンの懐に一撃を入れた。

「プックゥ!!」

そのままプクリンはダウンした。

「まだよ、エネコ”おうふくビンタ”!!」

「ネーッ!!」

エネコはすると、ムクバードからオニドリルに飛びつき連打を浴びせる。

「くっオニドリル反撃だ!!振り落とせ!!」

オニドリルが羽をバタつかせると同時にエネコもバランスを崩した。

そして、そのまま背中から落ちてしまった。

「”でんこうせっか”!!」

すかさずムクバードがオニドリルに一撃を加える。

そしてオニドリルもバランスを崩す。

同時にお腹のあたりに妙な重さを感じた。

「ネー・・・!!」

「ド・・・ルゥ?」

下向くオニドリルの目に映ったのはしつこくオニドリルの体に纏わりついていたエネコの悪魔のような頬笑みだった。

「”シャドーボール”!!」

エネコの”シャドーボール”がオニドリルの顔面直撃・・・。

そのままオニドリルは地面へと墜落して行った。

「プクリン、オニドリル共に戦闘不能!!よってイノキ大会タッグバトル部門優勝者はかがみ&エミリィペア!!」

「・・・・き、決まったぁ!!優勝はなんとなんと・・・かがみ&エミリィ選手だぁ!!」

ジャムの手がかがみ達に向けられる。

湧き上がる観客たち。

そして、つかさもまるで自分のことのように喜んだ。


当の本人たちも笑顔でハイタッチをかわした。

「かがみ、ありがとね!あんたとムクバードのお陰で勝てたわ!」

「それを言うならエミリィだって・・・っていうか”フラッシュ”なんて持ってたんならさっさと使っちゃえばよかったのに!!」

かがみがそう言うとエミリィは悪戯っぽく笑うと舌を小さく出した。

「ああいう小技こそ、ここぞって時にまで取っておくもんなのよ!」

それから、二人は相手のリキヤ達と握手を交わす。

彼らも最後はさわやかスマイルでかがみとエミリィ、二人の勝利を称えた。

「おめでとうさん!まさか二人ともルーキーだとはな・・・参ったぜ!」

「なぁお前もしかして最後オニドリルからわざとエネコに落ちるように仕向けたのか?」

「仕向けたなんて人聞きの悪い。作戦ですよ作戦!ああいう一発限りの奇襲は成功させるの結構大変なんですから!」

そうドウザンにエミリィは胸を張って言った。

どうやら奇襲こそが彼女の得意分野らしい。

こうして、バトルフロンティアイノキ大会は幕を閉じた。


「じゃあ、かがみまたどこかで会いましょう!」

「えぇ!!エミリィ達も元気で・・・!!」

スタジアム前で彼女たちは互いに手を取り合い再会を約束した。

「いやぁ・・・私も今度こそは優勝したいねぇ・・・もう少しトレーニングしないと!!」

こなたも今回の負けでかなりの気合いが入ったらしい。

そして、つかさはというと・・・

「今日はごめんねセバスチャン・・・。」

「いえ、こちらこそ!まぁでも楽しかったですし・・・もし次機会があればぜひ・・・」

なんという社交辞令・・・!!

って感じで互いに探り探りといった感じを相も変わらず続けていた。

「つかさ、ほら行くわよ!!」

かがみの声でいつまで続くか分からないgdgdトークはようやく終わりを迎えた。

慌ててつかさはかがみに駆け寄り、白石は一つつかさ達に礼をして静かにその場を後にした。

そして、エミリィとも別れ、またいつもの3人となった。

「そっかみんな一人旅かぁ・・・」

「うん・・・」

つかさの何気ない言葉にかがみは妙にそれを重く受け止めた様な返事を出した。

そのかがみの真意をこなたはまたうっすらと感じ始めていた。

「かがみ、いつまでも黄昏てないで行こう!」

「別に黄昏てなんて・・・って痛い!!離せ!!」

こなたはエミリィ達が歩いて行った方向をずっとみつめていたかがみのぶら下がった感のある二つのおさげの内の一つを掴むとグッと引っ張り次の目的地を促した。

さぁ・・・次はカミンアシティだ。


続く


あとがき


どもぽちゃです。

という訳でイノキ大会編でした。

なんかバトルが続くなぁと結構ゲンナリなのですが、残念!!

次の話もバトルです・・・。

いいんだいいんだ!!バトルは楽しい楽しい・・・・楽しい。

あ、補足ですが、かがみの手持ちポケモン達の性格ですが以下の通りです。


チコリータ:負けず嫌い・意地っ張り

ムクバード:まけずきらい・まじめ

ミミロル:てれや・さみしがり

クチート:負けず嫌い・意地っ張り・気まぐれ


・・・以上です。

ポケモンのゲームの性格値的なものとは全く関係ございません!!

ご了承ご了承!!


じゃ、また!!